”学生の街京都”で学祭に行かないなんてもったいない!ということでお届けしている学祭特集。
今回は前回に引き続き、京都造形芸術大学学園祭2015大瓜生山祭に注目いたします!
京都造形芸術大学編その3は『京造ねぶた』についてお伝えいたします!
今年度の「学長賞」を取った作品「ブラジャー」を作ったRクラスの学生さんに突撃インタビューしてまいりました!
毎年、大瓜生山祭を盛り上げる巨大な展示作品です。
点灯式では教授や学生による投票が行われ、優秀な作品には様々な賞が与えられ、毎年熱い戦いが繰り広げられます。
京造ねぶたのルールは以下のとおり。
・材料は「木材」「針金」「和紙」。
・作業期間は学祭直前の12日間のみ。
・発表された統一テーマに沿ったものを制作する。
そして驚きなのがこのねぶた、制作しているのは全員1回生なのです。
京都造形芸術大学の1回生は、学科・コースの枠を超えて集められたクラスで制作活動をする「マンデイプロジェクト」という授業に必ず参加しています。
毎週月曜日に行われるこの授業を通して、すべての1回生が「モノを観る・作る・考える・チームで仕事をする」ことを学び、その集大成として制作されるのがこの”京造ねぶた”なのです。
全21基という熾烈を極めた戦いを制した作品のモチーフは、夢とロマンの詰まった例のあれでした。
今回は、最高賞である「学長賞」と、「在京都フランス総領事賞」の2冠を達成したRクラスのリーダーの皆さんに取材させていただきました。
(写真左から)
中川明衣さん(空間演出デザイン学科 演出デザインコース 1回生)
浦 聡孝さん(舞台芸術学科 演技・演出コース 1回生)
井上 友里さん(文芸表現学科 クリエイティブ・ライティングコース 1回生)
制作された作品のタイトルは「ブラジャー」。
なんとも直球なネーミングで気持ちが晴れ晴れとしますね。
しかし、一体何がどうなって「重力」というテーマが「ブラジャー」になったのでしょうか?
それを伺うべく、まだ企画段階だった頃の資料を見せていただきました。
「縛り付けているもの」
「感じているけど触れないもの」
「源」
などなど、まずは「重力」とはなんぞや?というところから深堀りしていき、とにかく色んな案を出したのだそう。
そしてその中でもしょっぱなに誰かが発したのが「重力で垂れるおっぱいを作りたい」というびっくりするくらい単純な提案。
そこから「ブラジャー」に派生し、皆のテンションも上がりました。
しかし、テーマ発表から日も立っていないことや、「TD(テクニカル・ディレクター)」チェックと呼ばれる、先生によるデザイン画のチェックにも通らなかったことから、「うん、一旦ブラジャーは置いといて別のこと考えよう。」と、また企画会議を重ねることに。
しかしそれから、別の案がTDチェックを通った後も、やはり「ブラジャー」を諦めきれなかったRクラスは、もう一度「ブラジャー」の企画を提出。
見事、難関と言われるTDチェックを二度も通過することとなります。
案が二つも通るというのは、21クラス中Rクラスだけという異例の事態でした。
Rクラスの作品コンセプト
こうなったら勢いは止まりません。
Rクラスの展示場所が大学の正面玄関だったということもあり、「白川通りを通った人が思わず立ち止まってしまうようなやつを作ろう!」と、徹底的な本物の追求が始まりました。
まず、クラスのメンバー37人全員で1人500円ずつ出しあい、京都に本拠を置く衣料品ブランド、ワコールの1万7千円のブラジャーを購入。
手に入れたブラジャーはもちろん実際の女性にモデルとなって装着してもらってデッサン。
さらにワコールの本社へ行き、ブラジャーやトルソーについて、そして一番美しく見える人体の構造を研究。
それから「木組み班」「針金班」「刺繍班」「メッシュ班」に分かれ、各班が全力を注ぐ日々が始まりました。
リーダーのお3人より、各パーツ毎のこだわりについてコメントをいただきました。
メッシュはひとつひとつ和紙を3ミリの幅の帯状に切ったものを編み込んでいます。
帯状で切るところからはじめ、編んだ数は計算すると全部で300近くになります。
メッシュ自体は2種類あり、2種類とも再現した上刺繍ではないレースの部分も和紙だけで再現しました。
点灯時ブラジャーを見てみるとメッシュが浮かびあがっていて本当に綺麗です。
針金で形を作った後、和紙で針金を覆い完成へと持って行きました。
作業するまでは針金に触れたことない人が大多数でいざ触れてみると、上手に曲げられなかったりとすごく苦戦しました。
刺繍パーツをすべて作成し、繋ぎ合わせ、和紙を貼り、ロウを塗り完成を見た時の感動は今でも忘れられません。
ひとつひとつ個人で作っていると、自分がどこを作っているのか分からなくなり苦しい作業だったと思います。
点灯式の日完成した刺繍を見て感動して涙が出るほど綺麗なものになっていました。
この先どのブラジャーの刺繍を見ても、この柄を思い出すと思います。
Rクラスの熱い思いにはある理由がありました。
ねぶたの制作に入る前のマンデイプロジェクトで「ペーパーファッションショー」という、その名の通り紙で衣装を作ってショーをする課題が課されました。
Rクラスは、他のクラスが賞を取る中、唯一何も賞を取ることができませんでした。
その理由は明らかで、ディティールを作りこめていなかったから。
こうして悔しい思いをしたRクラスは「何があっても絶対に妥協しない」と心に決めて、ねぶたに向き合うこととなったのです。
こだわればこだわるほど時間がかかるのに、制作期間が12日間しかないというジレンマ。
朝6時に集合して作業することも余儀なくされる中、「ブラジャーのメッシュを作る」「人体の構造を表現する」など、みんながみんな初めての作業を手探りで行っていました。
設計図通りに作ったはずなのに、メッシュ部分が全然足りないという事件が起きても、落ち込む時間がもったいないから落ち込みながら作業を続ける、なんてこともあったそうです。
そしてやっと完成形も見え、ギリギリ間に合ったかと思われた点灯式当日の朝。
「やっぱり、金具があったほうがいい!」
17時まで作業時間は残されているとはいえ、まだ全ての和紙が貼れていない状況で、新しくパーツを足すなんてなんとも無茶な提案でした。
しかしここまでの11日間で、皆の作業スピードは格段に上がっていました。
そしてラストスパートに作り上げられた渾身の金具がこちらです!
うーむ、思わず手で外したくなる逸品ですね。
こうして、最後の最後までこだわりを貫いたねぶた「ブラジャー」が完成したのでした。
モチーフのインパクトや、特に難しいと言われる人体を見事再現した点などが観客の心をつかみ、見事最優秀賞の「学長賞」に輝いた「ブラジャー」。
(撮影:高橋保世)
点灯式では感動のあまり泣いてしまったというリーダーのお3人に、このねぶたの見どころを伺いました。
中川明衣さん
Rクラスはどのクラスよりも学長賞を狙いに行っていたと思います。
だからこそすべてを再現しようと頑張りました。
ブラジャーのすべてを立体で再現したところを見ていただきたいです。
井上 友里さん
見所といえば、すべてなのですが
ブラジャーの装飾部分はみんなの汗と涙と感動がつまっています。
立ち止まってゆっくり見ていただけたら嬉しいです。
浦 聡孝
どこに出しても恥ずかしくない作品になったと思います。
みんなの努力と共にブラジャーをじっくり見てほしいです。
完成度はもちろん、チームワークの素晴らしさまでひしひしと伝わってくる「ブラジャー」は、9月19日から20日まで開催される京都造形芸術大学学園祭2015「大瓜生山祭」にてご覧いただけます!
もちろんRクラスの作品だけでなく、21基のねぶたが一同に介しているので、圧巻の風景をご堪能いただけます。
特に灯りが点灯される夜に足を運ばれることをオススメいたします!
また、在京都フランス総領事賞に選ばれたこの作品は、京都市各所で開催される「ニュイ・ブランシュKYOTO/白夜祭」の会場の1つアンスティチュ・フランセ関西で、10月3日〜10日まで展示される予定です。
学祭にいけない方や、いつまでも見ていたい方はこちらも要チェックです!
【日程】09/19(土)〜09/20(日)
【住所】〒606-8271 京都府京都市 左京区北白川瓜生山2-116
【アクセス】市バス「上終町京都造形芸大前」下車すぐ
【HP】http://www.kuadfes2015.com/
協力:株式会社ワコール
投稿日:2015.09.18