京都で暮らそう

ページ上部へ

「日本における養蜂の歴史」シェプロのはちみつコラム~第9回~

シェプロのはちみつコラム第9回は「日本における養蜂の歴史」についてご紹介します!


現代の養蜂の様子
出典「http://www.stlucianewsonline.com/saint-lucia-aims-to-preserve-its-bee-population/bee-keeping/

 

先月はヨーロッパの養蜂の歴史についてご紹介しました。
今月は、日本にどうやって養蜂技術が伝わったのか?「日本の養蜂の歴史」のお話です。

「ハチミツと養蜂の伝来」


スペインアラニア洞窟の壁画
出典「https://en.wikipedia.org/wiki/Cuevas_de_la_Ara%C3%B1a_en_Bicorp

日本の歴史に初めて「養蜂」が登場するのは、643年、奈良時代のことと言われています。
ヨーロッパから中国、朝鮮半島~日本へと続く雄大なシルクロードを通じて、はちみつと養蜂は伝わりました。
当時、日本に住んでいた百済の王子が、奈良の三輪山で養蜂を試みた記述が残されています。

しかし、この時は気候とミツバチが上手く合わなかったのか、失敗に終わっています。
しかし、シルクロードを通じて運ばれた「はちみつ」は、大変貴重な薬として宮中へ献上されていました。当時は、豹の皮6枚や朝鮮人参18kgと、はちみつ1.8kgが同じ価値の物として扱われていたそうです。(ヨーロッパでもはちみつは黄金より高値で取引されていました。)

薬(漢方)としてのはちみつは「瀉下薬(便通を良くする)」「潤肺止咳(肺を潤し咳を止める)」「補中・緩急止痛(腹部の滋養、痛みを和らげる)」作用を持つと言われ、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの症状にも使われていました。また、そのままで食べると体内の炎症を鎮める効果があり、火を通したはちみつはお腹を温めて解毒に良いと言われています。
はちみつが貴重だった昔は、とっておきの薬として使われていたのです。

「平安時代の養蜂」


藤原宗輔
出典「https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E5%8E%9F%E5%AE%97%E8%BC%94

時代を少し下り、平安時代になると養蜂をする人が直接書物に登場します。
「今鏡」「十訓抄」を紐とくと、藤原宗輔という貴族がミツバチを飼っていたことが書かれています。彼は皆から「蜂飼の大臣」と呼ばれていたそうです。当時の人々からは嘲笑されていたそうですが、宮廷に蜂が大発生した際に、蜂の好物を与えて誘導したり、飼っている蜂の一匹一匹に名前を付けていたとのこと。
貴族が自ら養蜂をするのはとても珍しいことなので、このように複数の書物に大臣の名前が残っています。

この時代になると、国内ではちみつの生産が始まっており、記録も残されています。
また、はちみつが食用や薬としてだけでなく、貴族の使うフレグランスにも使われ始めています。その調合方法なども書物に残されているそうです。はちみつでフレグランスを作るとは、当時の女性もオシャレですね♪

「江戸時代~明治初期の養蜂」


左:ニホンミツバチ 右:セイヨウミツバチ
出典「http://www2u.biglobe.ne.jp/~vespa/apis/apis00.htm

はちみつやミツバチの研究がぐっと進んだのは江戸時代と言われています。はちみつのことを記した本も数多く生まれ、有名な貝原益軒の「大和本草」を始め、中国の漢方書を翻訳した「国訳本草網目」など、多くの本が学者の間で読まれ、はちみつやミツバチに関する研究が深まるキッカケとなりました。江戸時代における日本の一大生産地域は、熊野(和歌山県)で、一番研究も進んでいると言われていました。

明治初期には、はちみつに加え、ミツロウ作りも盛んになりました。
江戸時代~明治初期の養蜂では、日本の気候に合うおだやかな気質のニホンミツバチから蜜を採集していました。

しかし、ニホンミツバチによる養蜂は、旧式養蜂が技術書などで広く浸透したとはいえ、生産力はあまり高くありませんでした。採蜜量は、当時の和歌山県でも、現在の2割程度だったとのことです。

では、セイヨウミツバチの蜜の採集がいつから始まったかというと、1877年のことと言われています。
はちみつの需要が高まるにつれて生産性を上げるため、蜜を沢山作ることで知られていたセイヨウミツバチの飼育が日本で始まりました。

セイヨウミツバチの飼育の日本全国への広がりや、戦後の高度経済成長によって日本の森林が荒廃をたどったことにより、ニホンミツバチの飼育は大きく減っていくことになりました。

「現在の日本の養蜂」

現在は趣味として養蜂を行う人も増え、日本種の見直しもなされ、ニホンミツバチの飼育が増えてきています。
ミツバチを育てることは、私たちの生きる基本である“食”~野菜や果物を生み育てることに欠かせないものであり、ミツバチの飼育の副産物であるはちみつは、加工されていない自然本来の恵み~私たちの身体を土台から健康にしてくれる、栄養たっぷりな食べ物です。

現在の私たちは幸運なことに、ニホンミツバチ、セイヨウミツバチ、どちらが作ったはちみつも手に入れることができます。
蜜源の花によってはちみつの風味が違うように、ニホンミツバチ、セイヨウミツバチの作るはちみつも、それぞれ味わいの違いを楽しむことができます。
より自身にしっくりくるはちみつを探してみるのも、はちみつの楽しみ方の1つです♪

あなただけのmy honeyを見つけてみませんか?


出典:https://wallpaperscraft.com/download/honey_flowers_sweet_83005/2560x1600
 

 

[ナビゲーター] シェプロ 丹山 富江 プロフィール

仕事:
河原町二条「シェプロ」にて、日々体と心が喜ぶfoodについて勉強しています
趣味:
カフェ巡り。読書。
好きな作家:
アガサ・クリスティ/アーシュラ・K・ル=グウィン

 

シェプロのはちみつコラム 一覧ページへ

投稿日:2016.02.05