【前回までのあらすじ】
金閣寺を拝むべく京都にやってきたコマレは、京都で”イケズ”の洗礼を受けた!・・・かに見えた。実は他県で囁かれているイメージには勘違いが多々であって、京都人の行動には悪気はないことを体に叩き込まれた。そして、ペンギンのような姿をした謎の研究家”ぴーちゃん”は、コマレにさらなる特訓を与えようとしていた・・・。
「謝れー!!」
コマレはイケズを言われたことにまだ腹を立てていた。
「君は器が小さいなぁ。君は私がただただ悪口を言ったとでも思っているのかね?」
「それ以外何があるってんだ!」
「いいかね?私に言わせれば”イケズ”とは深い教養と軽やかなお茶目さを絶妙な配分で混ぜ合わせて放たれる、高貴な言葉遊びなのだよ。」
「何が高貴だ!お前高貴じゃないだろう!」
「ふむ、言いたい放題だな。私では納得できないのであれば、徳の高いお坊さまが嗜まれたイケズの話でもしてあげよう。」
そう言ってぴーちゃんは、えらいとこからエピソードを引っ張り出してきた。
仁和寺の真乗院に盛親僧都(じょうしんそうず)という、それはそれは大層イケメンで、めっちゃ頭良くて、めっちゃ力持ちで、異常なほど里芋が好きな方がいらっしゃいました。
ある日、この僧都はある法師を見て、こんなあだ名をつけました。
それを聞いた人が「しろうるりとはなんですか?」と尋ねたところ、「そんなんワシも知らん。でもほんまにそんなんおるんやったら、あいつみたいな顔してるんちゃうか。」と言い放ったのでした。
自分の好きなタイミングで起きては寝て、食事の時間など気にせず飯を食い、自由奔放に生活していた挙句、こんなイケズを言っちゃってたにも関わらず、誰にも嫌われることなく、むしろ許されていた盛親僧都。『徒然草』著者の兼好法師はこの僧都を見て、「うわ、これぞ徳の至高ちゃう?」と感動したとか。
〜〜〜〜
ぴーちゃんは自分で話しながら改めて盛親僧都に感動し、テンションがMAXに達していた。
「イケズを発し、発されることにいちいち動じない。それでいて人に尊敬されてしまうカリスマ性・・・。はあ、私も早くその次元にいきたいものだ!」
「あ、行けるのは前提なんだ。」
「ということで特訓をするぞ!」
「ん?何を?てかコマレも?」
「私が考案したこのゲームでイケズ力を鍛え、少しでも成親僧都に近づくのだ!」
「ルールは簡単!相手にイケズなあだ名をつけるのだ!ただし、存在しそうで存在しないもの限定だぞ!はい、まずは私から!ほら、早くそこに立て!」
「え?なに?ここに立てばいいの?」
「そうだ!よし!つけるぞ。」
「ぽっ、ぽへむ・・・。」
コマレは落ち込んでいいのか喜んでいいのかもよく分からなかった。
「はい!では次は君の番だ!」
「ええー、ちょっとっ!まだ消化しきれてないのにっ」
「はいはい!これはテンポが大事なのだ!ほら、じっと私を見て!」
「えーっと・・・。」
「なんだ?出ないのか?」
「いや違う!出ないわけじゃないの!ちょっと待って!!」
「全く、やはり君にはイケズの才能は無いな!」
「いや、ある!あるもん才能!!イケズだぁコマレはぁ!!」
こうしてまた、コマレの京都での一日は暮れていった。果たしていつになったら金閣寺にたどり着ける日が来るのだろうか。
次回!コマレの妹が参戦で、よりカオスな京都旅行に?お楽しみに!
<プチ追記>
※どうやら、ぴーちゃんもコマレも京都のイケズについて誤解があるようですね。イケズを正しく知りたいという方は、ぜひこちらをご参照ください↓
投稿日:2017.11.06