【神楽岡に佇む、和菓子と欧風菓子の店】
閑静な住宅街の広がる神楽岡通りを今出川から南へ数分歩くと、東側に大きなのれんが見えてきます。
店舗の少ない神楽岡通りでひときわ目をひく佇まいのお店、そこが「和菓子と欧風菓子の店 柏家宏之菓舗」です。
風になびく大きなのれんをくぐり中へ入ると、ショーウィンドウの右半分には中菓子（ちゅうがし：干菓子と生菓子の間、という意味）を中心とした和菓子が、左半分には季節のロールケーキや一口大のかわいいケーキが並びます。
「和菓子と欧風菓子」といっても、決して和洋折衷の創作菓子という意味ではありません。
和菓子・洋菓子それぞれに職人技が光る、いずれも本格的で一流の味わいのもの。
特に、冬場のみ販売される松露（しょうろ）の口溶けは絶品です。
一見、少し不思議にも思える「和菓子」と「洋菓子」が並ぶ理由。そこには、楽しい親子愛のエピソードがありました。
【家族の温かさが伝わる味】
柏家宏之は、昭和6年に創業。当代で3代目にあたられます。 元々は、先代の味を忠実に守られ、材料も決して妥協しない、本当に美味しい和菓子を守り伝えて来られた和菓子一本のお店だったそうです。
そんなある日。
マキシムでの修行の後、日本各地に放浪修行旅に出ようとされていた、洋菓子職人である娘さんの由美子さんがお家に戻ると、そこには洋菓子コーナーが。
それは由美子さんへ、お父様からの愛情溢れるサプライズプレゼントだったのです。
「放浪癖があるんです（笑）ただで良いから働かせて下さいって。マキシムの後、岐阜の山の中のお店で働いて、次は北海道に行く予定やったのに。いつのまにか京都で引きこもりです。」
そう笑って話されるゆみこさんのケーキは、繊細で丁寧なフランス菓子をしっかりと踏襲された、小さくてもしっかり満足感のある味わい。お父様譲りの素材へのこだわりが感じられます。
つい、あれもこれもと目移りしてしまう欲張り女子に嬉しいプチガトーの起こりは
「お客さんからのリクエストなんです。ようけ食べられへんし、ちっちゃいの作ってって。うちは地元のお客さん、それもお年いかれた方が多いから...」
【奥ゆかしく、おおらかに。されど譲れない職人の誇り】
数々のほのぼのとしたエピソードそのままに、お店のいたるところにご家族の仲の良さや、繋がりの温かさがみられます。
出迎えてくれる大きな暖簾も、毎月変わる御菓子の掛け紙も、すべて手作り。
趣味の良い掛け紙の書と絵は、お母さん手描きのもので、こちらの掛け紙を毎月楽しみにされているお客様も多いそう。
「素人やから恥ずかしいわ...」と謙遜されるものの、若い頃は絵の勉強をしたかったというお母さんの絵は、絵が好きだという想いが素直に伝わる、味わいのあるものばかり。
また壁際に並ぶ陶器は、陶芸作家で現在は陶器の販売をされている上の娘さんの商品棚。
椅子には東北復興支援のグッズまで並びます。
「色々置きすぎて、『何屋かわからん。美味しいはずがない。』なんて、食べもせずに酷いことをブログで書かれたこともあるんです。」
その人も、一口味わってみればそれが大きな間違いであったことに気がついたはず。
和菓子も洋菓子も、この色々感こそが柏家宏之の温かさであり、ほのぼのとした笑顔の向こう側に静かに秘められた、決して見せびらかさない確かな職人技が生み出す美味しさに、思わず笑顔がほころんだ筈ですから。
一言で言えば、品の良い水無月。
砂糖の質の良さがすぐに分かる、品の良い甘さと
ほんのりとしたニッキのお味が口に広がります。
ういろうの固さ、甘さともに非常にバランスのとれた逸品。
白と黒糖の2種類。
基本情報
| 名称 | 柏家宏之菓舗 |
|---|---|
| 住所 | 〒606-8311 京都市左京区吉田神楽岡町60番地 |
| アクセス | 市バス「銀閣寺道」より徒歩5分 |
| TEL | 075-771-6529 |
| FAX | 075-751-9128 |
| 営業時間 | 9：00～18：00 |
| 定休日 | 日曜日・月曜日 年末年始・夏、不定休 |
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