「ハッピーハロウィン!」
「私は主人公の牧田小稀(マキタコマレ)!就活も終わったし、単位も足りているから、これからの半年間は残されたモラトリアムを無双するって決めたの!でもこないだの京都ひとり旅で、金閣寺に行こうとしたら迷子になっちゃって、しかも変なペンギンに邪魔されて結局行けなかったんだよ!ひどいよね!」
(どうやって邪魔されたかは第1話へ!)
ということで今日は、金閣寺に再挑戦すべく京都にやって来たコマレ。そしてあれよあれよという間に、また迷子になってしまった。
「はあー、どうしてコマレったらこんなに方向音痴なんだろ。あの人に道聞こっと。」
コマレは、近くにいたいかにも京都在住っぽい女性に声をかけた。
「すみませーん。金閣寺に行きたいんですけど、ここからどうやって行けばいいんでしょうか。」
「へえ、金閣寺・・・。」
女性は少し困った顔になって、こう答えた。
「あ、そうなんですね。すみません、ありがとうございました!」
コマレはお礼を言ってすぐにその場を去ったが、しばらくして「ん?」と立ち止まった。
「ということは、さっきのも実は・・・。」
ピシャアアアン!
コマレはガタガタと震えだした。そこへ、研究のために狂言の練習をしていたぴーちゃんが偶然通りかかった。
「む?君はいつぞやの。」
「あ!ぺんぎんのやつ!うわーんちょっと聞いて!悲しいの!」
と、コマレは悲しさのあまり、自分が受けたイケズ被害を、ぴーちゃんに訴えた。
「なるほどよくわかった。君の気持ちはもちろん、相手の女性の気持ちもね。」
「ほんとに?!」
「ふむ。彼女の主張はシンプルにこういうことだ。」
「そ・・・、そんなはずはっ。だって、相手はあの、金閣寺ですよ?」
コマレは、驚きのあまり変な敬語になった。
「あんな超有名観光スポットに、京都の人が行ったことないなんてことが・・・」
「京都人だからこそだ。考えてもみたまえ。京都人は生まれた時から身の回りが全て観光地なのだよ。そして物心ついてからも「いつでも行けるし〜」と油断して、わざわざ足を運ぼうという気持ちが沸点に達しないのだ。そして大学生にもなると、季節の感じ方に以下のような決定的な差が現れる。」
「京都人はもはや観光ではなく、観光客で季節を感じているというの・・・?!」
「そう!だから先ほどの女性も、イケズなんかではなく、ただ単純に金閣寺への詳細なアクセス方法を知らないという可能性が高いのだ。まったく、君のようなこうした勘違いのおかげで、”京都人は全員腹黒い”という謎の汚名を着せられる京都出身者があとを絶たないのだよっ。」
「え、でも京都=イケズっていうのは昔から言われてるでしょ?」
「ふん。君なんかには本物のイケズは見抜けまいよ。」
「むっ。私イケズ言われたらすぐわかるもんっ。」
「では今から会話をして、私のイケズに上手く切り替えしてみたまえよ!」
「のぞむところだ!」
「では。よーい、はじめ!」
「ギャッ」
「なんだ今の危機感もへったくれもない返事は!」
「え?もう今イケズ言ったの??」
「そら見たことか。何も気づいていないじゃないか。」
「え・・・。名前間違えたとかそうゆうこと?」
「違う!”平野さん”とは平野神社のことだ。」
「平野神社は北野天満宮、つまり”北野さん”よりも北にある。よって平野さんとは、『北野を超えて』その先にある神社なのだ。」
「この読みを、ひらがなにするとこうなる。」
「そして、こうだ。」
「ギイヤァ!!ちょっと!じゃあさっき、めちゃめちゃ酷いこと言ってたのかあんた!!」
「そうだ!」
「しかもその上思いっきりしばいたのか!」
「そう!」
「そう!じゃねえ!謝れ!」
こんなに恐ろしくて難解なイケズを日常でする人は、そうそういません。みなさん、怖がらず秋の紅葉を楽しんでくださいね。
次回!さらなるイケズ特訓で、コマレがメキメキ鍛えられる?!第4話をお楽しみにね!
投稿日:2017.10.31